氷魚の業務メモ

またの名を,氷魚の書き散らかし

図書館不要論に対して思うこと

今日の年末大掃除はひとまずここまで。(もしかしたらこれで今年のブログ的年末大掃除終わりかもしれないけど…)
きちんとまとめきれなかった感があるので,大筋はこのまま,ちょこちょこと書き直すかもしれません。

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秋頃にとても話題になった記事があり,言及したいと思いつつタイミングを逃してしまったので,もう少しぼやんとした独り言のような話を書きます。


個人的には,その人が必要としていないのであれば,無理に行くことはないのでは,と思っています。
ただ,それは図書館そのものが要らないじゃないと思っているわけではないし,本屋や助成金があればそれでいいじゃない,とは思えません。
なので,基本的には,図書館は(社会としては)必要である,と考えています。


理由はいくつかあるのですが,まず,図書館だからこそ集められる資料*1があること。
また,これをうまく言語化できていないのですが,どこに行っても基本的には*2同じ分類法で資料を体系だてて整理してあり,似たテーマの資料,同じテーマについて論じている様々な立場の資料を一元的に探すことができること。ずれたたとえではあるのですが,辞書を開いたとき,探そうと思っていなかった言葉を偶然に見かけて,でも,「あ,これだ」と思うことがたぶんあると思うのですが,図書館の書架ではそういう出会いが有り得ること。
それから,日本国憲法に記されている「自由」「権利」,特に以下に挙げるものについて,図書館がそれらを保障する手段のひとつとして機能していると考えられます。

第十九条  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十三条  学問の自由は、これを保障する。

第二十六条  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

日本国憲法


本の並びの話についてはまぁ書店でもジャンル別に並べてるじゃん,というのもあるので説得力が弱いのですが,灰色資料を収集し,平等に機会を提供することができる場所,という意味では,やはり書店よりは図書館になるのではないでしょうか。
そうは言っても自分の住んでいる町にあることにはなってるけど不便な場所にあって…とか,近くにあるけど古い本ばかりで…とか,色々問題があるところは少なくありません。
でも,たぶんこれって郵政完全民営化したら過疎地域はどうするの,にある意味近いものもあるのかなと思ったりしなくもないので,できれば身近な図書館で感じた問題点を図書館不要論に直結させる前に少し待って(できれば考えて)みては,と思った次第です。


なお,図書館は「図書館法」「大学設置基準」などを設置の根拠としているところが多いですが,このあたりは日本図書館協会の「図書館について」がざっくりまとめてくれているので,こちらを読んでいただくのが良いのかしら,と思います。

*1:ここでは所謂灰色資料,つまり,研究報告やテクニカルレポート,学位論文など,そして郷土資料あたりのことを主に想定しています。なお,灰色文献の定義についてはこちらの記事を,詳しく知りたい方には「情報の科学と技術」62(2)(抄録目次)がオススメです

*2:図書館によっては独自分類で分類・配架しているところもあります